遺族年金

遺族基礎年金・寡婦年金・死亡一時金、遺族厚生年金の基礎知識

全国民共通の死亡保障は、国民年金の遺族基礎年金

全国民共通の死亡保障として、国民年金から支給される遺族基礎年金があります。

遺族基礎年金は、死亡日において次のいずれかに該当していた人が死亡したときに支給されます。

(1)国民年金の被保険者

(2)国民年金の被保険者であった人で、日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人

(3)公的年金の保険料を納めた期間や免除などを受けた期間等が合計25年以上ある人

遺族基礎年金と保険料納付要件

保険料納付要件:上記(3)の場合を除き、遺族基礎年金が支給されるためには、死亡日の前日において次のいずれかを満たしている必要があります。

①死亡日のある月の前々月までの公的年金加入期間のうち2/3以上の期間について保険料を納めたか免除(保険料納付猶予・学生納付特例を含む)を受けたこと

②死亡日において65歳未満で、死亡日のある月の前々月までの1年間に保険料未納期間がないこと(死亡日が2026年4月1日前の場合の特例)

上記(3)の要件を満たしていない人が亡くなった場合は、保険料納付要件を事前に満たしておかないと遺族基礎年金は支給されません。

万一の際に保険料納付要件を満たしているように、国民年金保険料を未納のまま放置するのではなく、納付するか免除などをを受けておくことが重要です。

遺族基礎年金をもらえる遺族とは

また、遺族基礎年金をもらえる遺族は、亡くなった人の死亡の当時、その人によって生計を維持されていた次のいずれかの人に限られます。

(1)次のいずれかに該当する未婚の子と生計を同じくする配偶者

(2)次のいずれかに該当する未婚の子

・18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子

・20歳未満で障害等級1級または2級に該当する障害の状態にある子

つまり、遺族基礎年金は、子のある配偶者、または、子にしか支給されません。

子のいない人が亡くなっても、遺族基礎年金は支給されません。

亡くなったときに(1)の配偶者と(2)の子がいれば、末子が原則として18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間に限って、配偶者に遺族基礎年金が支給されます(配偶者が遺族基礎年金の受給権を有するとき等は、子に対する遺族基礎年金は支給停止となります)。

末子が18歳に達する日以後の最初の3月31日を迎えると遺族基礎年金は原則としてそこまでで支給終了です(末子が障害状態1・2級の障害状態にあるときは、末子が20歳になるまで支給されます)。

つまり、遺族基礎年金は原則として残された子供が高校を卒業するまでの間だけの遺族保障といえます。

遺族基礎年金の支給額(年額)と子の加算

遺族基礎年金の支給額:781,700円(+子の加算)

子の加算(配偶者が遺族基礎年金を受給する場合):次のいずれかに該当する未婚の子がいる配偶者が遺族基礎年金を受ける場合、子の人数×224,900円が加算されます(3人目の子からは75,000円のみ加算されます)。

・18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子

・20歳未満で障害等級1級または2級に該当する障害の状態にある子

子の加算(子が遺族基礎年金を受給する場合で、受給権のある子が2人以上いる場合):遺族基礎年金の額に、子の数に応じた加算が行われます(2人目の子について224,900円加算。3人目の子からは75,000円加算)

(注)遺族基礎年金を受給できる子が2人以上いるときは、それぞれの子に対して支給される額は、子の数で割った額となります。

(事例)
45歳(保険料納付要件を満たしているとします)の国民年金被保険者が、配偶者(40歳)と子(15歳。障害等級1・2級に該当しない)を残して亡くなると、死亡の当時生計を維持されていた配偶者に、遺族基礎年金781,700円+子の加算1名分224,900円の合計1,006,600円が支給されます。

子が18歳に達する日以後の最初の3月31日を迎えると、(子が障害等級1級・2級に該当していない限り)遺族基礎年金および子の加算は支給されなくなります。

遺族基礎年金や子の加算だけでは、万一のときの死亡保障として不十分だと感じる人もおられるかもしれません。

子がいない国民年金第1号被保険者の遺族補償は死亡一時金・寡婦年金のみ

国民年金の遺族保障では、子のある配偶者または子が受給する遺族基礎年金が全国民共通の給付です。

国民年金の遺族保障としては、遺族基礎年金以外にも、一定期間以上国民年金第1号被保険者として保険料を納付したか免除を受けた人が年金をもらわずに亡くなったときに、残された妻に支給される「寡婦年金」や、残された一定の遺族に支給される「死亡一時金」もあります。

これらの給付は、子のない妻が残された場合でも支給されます。

しかし、給付内容は以下の通り、充実したものではありません。

寡婦年金の概要

寡婦年金の支給要件

  • 支給要件:死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者(65歳までの任意加入被保険者を含みます)としての保険料納付済期間・保険料免除期間を合算した期間が10年以である夫が死亡したときに、夫の死亡当時夫によって生計を維持していた、夫との婚姻関係が10年以上継続した、65歳未満の妻に対して支給されます。

亡くなった夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受けていないことが必要です。

また、妻が老齢基礎年金を繰上げている場合は支給されません。

寡婦年金の支給額

  • 寡婦年金の支給額:夫の老齢基礎年金額×4分の3

夫の老齢基礎年金額は、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者(65歳までの任意加入被保険者期間を含みます)としての国民年金加入期間に係る死亡日の前日における保険料納付済期間・保険料免除期間により計算されます。

寡婦年金の支給期間

  • 寡婦年金の支給期間:残された妻(寡婦)が60歳になる月の翌月から65歳になる月まで。妻が60歳になってから夫が亡くなった場合は、夫が亡くなった月の翌月から妻が65歳になる月まで

残された妻が65歳になると、妻自身の老齢基礎年金をもらえるようになりますので、それまでの生活保障のために支給される年金です。

妻自身が他の年金をもらえる間は、いずれかの年金を選択となります。

死亡一時金の概要

死亡一時金の支給要件

  • 支給要件:死亡の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者(任意加入被保険者を含みます)としての国民年金加入期間に係る次の期間の月数を合算した月数が36月以上ある人が死亡したときに、一定の遺族に支給されます。

・保険料納付済期間の月数

・保険料4分の1免除期間の月数×4分の3

・保険料半額免除期間の月数×2分の1

・保険料4分の3免除期間の月数×4分の1

ただし、老齢基礎年金または障害基礎年金を受給したことがある人が亡くなった場合は、支給されません。

死亡一時金をもらえる遺族の範囲

  • 遺族の範囲:死亡した人の配偶者、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹であって、その人の死亡当時その人と生計を同じくしていた人(死亡の当時生計を同じくしていた配偶者がいる場合は、配偶者だけが受給できます)

死亡一時金の支給額

死亡一時金の支給額は次の通りです。

合算した月数 支給額
36月以上180月未満 120,000円
180月以上240月未満 145,000円
240月以上300月未満 170,000円
300月以上360月未満 220,000円
360月以上420月未満 270,000円
420月以上 320,000円

付加保険料納付済期間が3年以上ある人の死亡により遺族に支給される死亡一時金には8,500円が加算されます。

死亡一時金と寡婦年金、死亡一時金と遺族基礎年金

なお、死亡一時金と寡婦年金を受給できるときは、選択によりどちらかが支給されます。

また、死亡一時金と遺族基礎年金を受給できるときは、遺族基礎年金が支給されます。

厚生年金保険に入っている間の死亡に対しては、遺族厚生年金もある

次のいずれかに該当する場合は、死亡の当時その人によって生計を維持されていた一定の遺族に遺族厚生年金が支給されます。

(1)厚生年金保険の被保険者が死亡したとき

(2)厚生年金保険の被保険資格を喪失後、被保険者であった間に初診日がある病気やケガが原因で、その初診日から起算して5年を経過する前に死亡したとき

(3)障害等級1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき

(4)公的年金に加入して保険料を納めたか免除などをを受けた期間等が合計25年以上あり、そのうち1月でも厚生年金保険に加入した人が死亡したとき

ただし、上記の(1)または(2)に該当する場合は、遺族基礎年金と同様の保険料納付要件を満たしていないと、遺族厚生年金は支給されません。

上記(1)に該当する場合でも、保険料納付要件を満たしていれば遺族厚生年金は支給されます。

したがって、現在国民年金に加入している人が厚生年金保険に加入した直後に亡くなった場合であっても、保険料納付要件を満たしていれば、遺族厚生年金が支給されます。

 

遺族厚生年金は、子のない配偶者にも支給される

遺族厚生年金が支給される遺族・支給順位は次の通りです。

1.配偶者(妻または55歳以上の夫)および子

2.(55歳以上の)父母

3.孫

4.(55歳以上の)祖父母

(注)子や孫は、遺族基礎年金と同様次のいずれかに該当する未婚の子・孫をいいます。

・18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子または孫

・20歳未満で障害等級1級または2級に該当する障害の状態にある子または孫

死亡の当時、死亡した人に生計を維持されていたこれらの人のうち最も優先順位が高い人が遺族厚生年金を受け取れます。

子のある妻や子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金の受給権を有する期間、子に対する遺族厚生年金は支給停止となります。

上記の通り、遺族厚生年金をもらえる遺族の範囲は遺族基礎年金に比べて広いです。

子がいないため遺族基礎年金がもらえない場合であっても、残された配偶者がいれば配偶者が遺族厚生年金をもらえます。

ただし、子のいない30歳未満の妻が遺族となった場合は、5年で遺族厚生年金をもらえなくなります。

また、55歳以上の夫、父母、または祖父母が遺族厚生年金をもらう場合は、実際にもらえるのは原則として60歳からとなります(遺族基礎年金ももらえる場合は、60歳未満でも遺族厚生年金を受給できます)。

遺族厚生年金には、厚生年金保険加入期間に300月の最低保障がある

遺族厚生年金の年金額は、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)・老齢厚生年金(報酬比例部分)や障害厚生年金と同様の「報酬比例部分の年金」の計算式を用いて算出した額(亡くなった人の厚生年金保険加入期間を基礎として計算した額)の3/4となるのが原則です。

・遺族厚生年金=報酬比例部分の年金(平均標準報酬額×5,481/1,000×2003年4月以降の厚生年金保険加入期間の月数)×3/4

2003年3月以前に厚生年金保険加入期間がある人の場合は、次の通りです。

・遺族厚生年金=報酬比例部分の年金(平均標準報酬月額×7.125/1,000×2003年3月以前の厚生年金保険加入期間の月数

+平均標準報酬額×5,481/1,000×2003年4月以降の厚生年金保険加入期間の月数)×3/4

ただし、下記(1)~(3)の場合は、厚生年金保険加入期間に300月の最低保障があります。

(1)厚生年金保険の被保険者が死亡したとき

(2)厚生年金保険の被保険資格を喪失後、被保険者であった間に初診日がある病気やケガが原因で、その初診日から起算して5年を経過する前に死亡したとき

(3)障害等級1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき

したがって、これまで厚生年金保険に入ったことがない人が厚生年金保険に加入後すぐに亡くなった場合(この場合、(1)にあたります)でも、保険料納付要件を満たしていれば、厚生年金保険加入期間の月数については25年加入したものとして計算された遺族厚生年金が遺族に支給されます。

残された配偶者または子が遺族基礎年金も受けられる場合は、遺族基礎年金も遺族厚生年金も支給されます。

40歳以上の妻が残されたときは、中高齢寡婦加算が年間約60万円付く

厚生年金保険に加入している夫や、公的年金に25年以上加入し、20年以上厚生年金保険に加入したなどの要件を満たす夫が死亡した当時に、妻が40歳以上の場合(または、夫死亡当時妻が40歳未満でも、40歳になったときに妻が遺族基礎年金を受けている場合)、妻が受け取る遺族厚生年金には、妻が40歳から65歳になるまでの間「中高齢寡婦加算」(2020年度は586,300円)が加算されます(ただし、妻が遺族基礎年金を受け取ることができるときは、中高齢寡婦加算は支給停止されます)。

なお、夫の死亡当時40歳未満で子のいない妻が40歳になっても、中高齢寡婦加算は支給されません。

厚生年金保険に加入すると、亡くなった後の遺族保障の充実につながります。

遺族厚生年金、遺族基礎年金についてのその他の注意事項

・遺族厚生年金をもらえる人が65歳以上の場合は、老齢基礎年金と遺族厚生年金の両方をもらえます。
ただし、65歳以上で遺族厚生年金も自分の老齢厚生年金も受け取る権利がある場合は、老齢厚生年金が優先して支給され、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額まで支給停止となります。

・65歳前に、老齢年金と遺族年金の両方をもらうことはできません。両

方の権利がある場合でも、どちらか一方を選択してもらうこととなります。

・遺族年金は非課税です。

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