助成金

新設・拡充予定の雇用助成金と令和3年度会計検査院検査報告

新設・拡充予定の雇用助成金

先日厚生労働省が、第2次補正予算における主要施策を公表しました。
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/22hosei/dl/22hosei_20221108_01.pdf

その中で、「賃上げ・人材活性化・労働市場強化」のための「雇用・労働総合政策パッケージ」等に 7,444億円の予算要望が計上されており、
次のように、多くの中小企業で活用できそうな助成金の創設・拡充案が挙げられています。

・最低賃金引上げへの対応を支援するための業務改善助成金の拡充
・生産性向上に向けた取組を支援する働き方改革推進支援助成金の拡充

・企業内における事業展開等に伴う労働者のスキル習得を支援する人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース(仮称))の創設

・キャリアアップ助成金による非正規雇用労働者の処遇改善
・特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース)を活用した就職困難者の人材育成の推進
・賃金上昇につながるスキルアップを目的とした在籍型出向を支援する産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース(仮称))の創設
・賃金上昇を伴う早期再就職を支援する労働移動支援助成金の見直し
・賃金上昇を伴う中高年齢者の中途採用の拡大を支援する中途採用等支援助成金の見直し
・同一労働同一賃金の徹底

まだ予算案の段階ですが、生産性向上・賃上げ、人への投資(教育)、成長産業への労働移動など国の労働政策の流れを汲んだ来年以降の雇用助成金の方向性がわかり
ますね。

予算が成立し、自社で使えそうなものがあれば、活用してみてもよいでしょう。

令和3年度会計検査院検査報告

先日、会計検査院による令和3年度決算検査報告の概要等が会計検査院ホームページで公表されました。
https://www.jbaudit.go.jp/report/new/index.html

厚生労働省関連の「不当事項」(検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項)としては、
過去の各年度と同様、次の二つの事項が指摘されています。

1.老齢厚生年金の支給が不適切
厚生年金保険の被保険者となるべき状態で働いているのに、会社が被保険者資格取得届を提出しなかった(違法)ことにより、
在職老齢年金制度による年金支給停止が行なわれず、老齢厚生年金を不正受給していた。

不適切な年金支給額は、全額返還の処置が執られた。

2.健康保険料・厚生年金保険料の徴収額が不当
健康保険・厚生年金保険の被保険者となるべき状態で働いているのに、
会社が被保険者資格取得届を提出しなかったり取得日が事実と異なっていた(違法)ことにより、
社会保険料の納入不足が生じていた。

徴収不足額は、すべて徴収決定の処置が執られた。

これらの二つの不当事項の指摘については、毎年度報告されていますが、
今年度の指摘結果では、上記1において、次のような「70歳以上の」「社長の」年金不正受給事例が公開されていることが、特に注目されます。

・遅くとも令和元年5月から事業主として労務の対償として報酬を受けていたため、厚生年金保険の「70歳以上被用者」に該当していたものの、
会社が「70歳以上被用者該当届」を提出していなかった。

(注)平成31年4月以降は、70歳到達前後で標準報酬月額に変動がない場合は、
「70歳到達届」(厚生年金保険の被保険者喪失届と70歳以上被用者該当届が一枚の用紙に合体させたもの)を提出する必要はなくなりましたが、
70歳到達前後で標準報酬月額に変動がある場合は、「70歳到達届」の提出が必要です。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/hihokensha/20140218.html

上記リンク先(日本年金機構ホームページ)の説明では、「従業員が70歳になったとき」と記載されていますが、
従業員が70歳になったときだけでなく、「代表取締役・取締役等役員で厚生年金保険被保険者となるべき状態で働いている人が70歳になったとき」も同様です。

・このため、令和元年6月分から令和3年5月分までの老齢厚生年金のうち、本来なら在職老齢年金制度により支給停止となっていたはずの年金を不正受給してしまっていた。

・不正受給額は全額返還することとなった。

昨年度までは、60歳台前半の、おそらくパート従業員と思われる事例が公開されていました。

今年度から65歳までの在職老齢年金制度の基準額が28万円から47万円と大幅に緩和されました。

ですから、今後の会計検査院検査においても、老齢厚生年金支給が不当と指摘される事例としては、
経営者層のケースが中心となっていくでしょう。

今回の会計検査院検査結果報告では、雇用保険の助成金の不正受給の指摘・返還措置も報告されています。

1.雇用保険の人材開発支援助成金の不正受給
・職業訓練を実施していないのに、実施したと偽って申請
・職業訓練経費を支払っていないのに、支払ったと偽って申請

2.雇用保険のキャリアアップ助成金の不正受給
・職業訓練を実施していないのに、実施したと偽って申請
・賃金総額を5%増額させていないのに、増額させたと偽って申請

これらの助成金の不正受給に関わった代理人等に関する情報は各労働局で共有されることとなっていますが、
今回会計検査院は、共有された情報に基づき、既に支給済みの助成金についても、その代理人等が関与していなかったかどうかを厚生労働省に確認させた上、
不正受給との類似点が多いなどの特徴がみられる申請について、労働局に調査をさせたそうです。

その結果、多数の不正受給が明らかとなったとのことです。

今後は、不正受給に関わった代理人等情報が共有された時点で、
その代理人等が関与した申請がないかを、各労働局において確実に確認することとされました。
https://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary03/pdf/fy03_zumi_05.pdf

助成金・補助金等については、要件を満たしていないのに、
形式上満たしているかのような体になっていれば問題はない、
といった類の誤った情報もインターネット上等で見られることがありますので、
経営者としては、それらに騙されないことが大事です。

令和4年度の受付が停止されていた以下の産業保健関係助成金については、
廃止となることが11月9日に公表されました。
・小規模事業場産業医活動助成金
・ ストレスチェック助成金
・ 職場環境改善計画助成金
・ 心の健康づくり計画助成金
・ 治療と仕事の両立支援助成金
・ 副業・兼業労働者の健康診断助成金
・ 事業場における労働者の健康保持増進計画助成金
https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/1251/Default.aspx

助成額は少ないものの、多くの事業所において申請できる助成金が廃止されることとなりました。

これらの助成金が廃止されるにいたった背景には、助成金の不正受給事件があります
(9月に不正受給を行った事業者名・代表者氏名等が公表されていました)。

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