働く高齢者 年金減額縮小
月収62万円まで全額支給
厚労省検討
厚生労働省は働く高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度を見直す。今は65歳以上で47万円を超える月収がある人は年金が減るが、月収を62万円に引き上げて対象者を減らす案を軸に議論する。
以上、2019年10月6日 日本経済新聞より引用
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50657340V01C19A0MM8000/
このような記事が先日の日経新聞朝刊1面に載っていました。
「月収62万円まで全額支給」という見出しを見て、誤解をする人が多くなるかもしれないと感じましたので、触れておきます。
この記事における「月収」とは、会社から受ける給与月額のことではありません。
次の二つの合計額のことを「月収」と表現されていると思われます。
1.会社から受ける「給与月額」
2.給与月額との調整の対象となる「年金月額」
この記事の「月収」という言葉を「給与月額」のことだと思って読んでしまうと、例えば、次のような誤解をしてしまう可能性があります。
・65歳以上で「給与月額」が47万円ちょうどの場合は、「47万円を超える月収」があるわけではないので、現在の制度では、年金は減額されない。
しかし、そのような人の「年金月額」がもし10万円なら、年金月額は5万円減額されます。
そのような人の「年金月額」がもし12万円なら、年金月額は6万円減額されます。
なぜなら、65歳以上の在職老齢年金制度は、ざっくり説明すると、「給与月額」と「年金月額」とを足して「47万円」を超えたら、超えた分の半分だけ年金月額を減額する、という制度だからです。
この「47万円」という基準額が仮に将来「62万円」に引き上げられたとしても、給与月額62万円の人は、年金の全額は支給されません。
65歳以上で給与月額62万円の人の年金月額がもし10万円なら、年金月額はやはり5万円減額されます。
そのような人の年金月額がもし12万円なら、年金月額はやはり6万円減額されます。
なぜなら、65歳以上の在職老齢年金制度の基準額が47万円から62万円に引き上げられただけであれば、「給与月額」と「年金月額」とを足して「62万円」を超えたら、超えた分の半分だけ年金月額を減額する、という制度だからです。
(本年8月27日の財政検証結果公表以来、公表されている社会保障審議会年金部会における資料においては、在職老齢年金制度の見直しについて、65歳以降の基準額を引上げる案(47万円→62万円)が記載されています。)
その他、この記事のように在職老齢年金制度についてざっくりと説明する際によく使われる「給与月額」や65歳以上の「年金月額」は、それぞれ、正確には次の内容を指す言葉であって、日常生活で使う「給与月額」「年金月額」とは全く異なることにも注意が必要です。
・「給与月額」:「標準報酬月額+その月以前の1年間の標準賞与額の総額÷12」のこと。
年金用語では、「総報酬月額相当額」といいます。
なお、「標準報酬月額」は給与月額とは異なることがあり、「標準賞与額」も賞与額とは異なることがあります。
・65歳以上の「年金月額」:原則として老齢厚生年金(報酬比例部分)÷12のこと。老齢基礎年金や老齢厚生年金(経過的加算部分)は含まれません。
年金用語では「基本月額」といいます。
なお、記事によると、10月9日に開催される社会保障審議会で基準額を引き上げる案等が厚生労働省から示され、年末までに結論を出し、2020年の通常国会での法案提出が目指されているとのことです。
在職老齢年金の基準額の引き上げは、将来の年金財源を減らすことにつながりますから、厚生年金保険料収入を増やす改正(70歳以降も最高75歳まで厚生年金保険料を負担する、501人以上企業におけるパート労働者の厚生年金保険加入要件を500人以下企業にも広げる)や繰下げ制度の改正(70歳超最高75歳までの繰下げも選択できるようにする)などとも併せて、年末まで議論される予定です。
実際にどのような改正になるか、いつから改正されることとなるかは、まだわかりません。