在職老齢年金

在職老齢年金制度の見直し(基準額緩和・廃止)のオプション試算・2019年8月27日財政検証

少なくとも5年ごとに行われる国民年金・厚生年金保険の財政検証結果の公表が先週火曜日の社会保障審議会年金部会で行われました。

併せて、今後見直しが議論されている点について、下記のオプション試算結果も公表されました。

オプションA  被用者保険(厚生年金保険・健康保険)の更なる適用拡大

適用拡大1(125万人ベース); 被用者保険の適用対象となる現行の企業規模要件を廃止した場合
・所定労働時間週20時間以上の短時間労働者の中で、
一定以上の収入(月8.8万円以上)のある者(125万人)に適用拡大し、短時間労働者の中で適用される者の比率が一定と仮定した場合

適用拡大2(325万人ベース); 被用者保険の適用対象となる現行の賃金要件、企業規模要件を廃止した場合
・対象外となる者を除いて、所定労働時間週20時間以上の短時間労働者全体に適用拡大。
学生、雇用契約期間1年未満の者、非適用事業所の雇用者については対象外。

適用拡大3(1,050万人ベース); 一定の賃金収入(月5.8万円以上)がある全ての被用者へ適用拡大した場合
・学生、雇用契約期間1年未満の者、非適用事業所の雇用者についても適用拡大の対象。(雇用者の中で月5.8万円未満の者のみ対象外)

オプションB  保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択

1 基礎年金の拠出期間延長; 基礎年金給付算定時の納付年数の上限を現在の40年(20~60歳)から45年(20~65歳)に延長し、納付年数が伸びた分に合わせて基礎年金が増額する仕組みとした場合

2 在職老齢年金の見直し; 65歳以上の在職老齢年金の仕組みを緩和・廃止した場合

3 厚生年金の加入年齢の上限の引き上げ; 厚生年金の加入年齢の上限を現行の70歳から75歳に延長した場合

4 就労延長と受給開始時期の選択肢の拡大; 受給開始可能期間の年齢上限を現行の70歳から75歳まで拡大した場合、65歳を超えて70歳、75歳まで就労した者が、受給開始時期の繰下げを選択すると給付水準がどれだけ上昇するかを試算。

5 就労延長と受給開始時期の選択肢の拡大(オプションB-4に1~3の制度改正を加味)
上記1~3の制度改正を仮定した上で、受給開始可能期間の年齢上限を現行の70歳から75歳まで拡大した場合、
65歳を超えて70歳、75歳まで就労した者が、受給開始時期の繰下げを選択すると給付水準がどれだけ上昇するかを試算。
注;上記4、5の試算において、70歳以上の繰下げ増額率は、現行の繰下げ増額率(1月当たり0.7%)を使用すると仮定

オプション試算と将来の年金の所得代替率・年金水準

資料1
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000540583.pdf
によると、

オプション試算A(被用者保険の更なる適用拡大)については、
「適用拡大は、所得代替率や、基礎年金の水準確保に効果が大きい」とされています。

「所得代替率」とは、現役会社員の賃金水準に対する高齢夫婦世帯への年金額の割合のことです。

オプション試算B(保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択)
・基礎年金の加入期間の延長
・在職老齢年金の見直し
・厚生年金の加入年齢の上限の引上げ
・就労延長と受給開始時期の選択肢の拡大
については、
「就労期間・加入期間を延長することや、繰下げ受給を選択することは、年金の水準確保に効果が大きい。」とされています。

在職老齢年金制度の見直しについては、そのような効果は認められない、ということですね。

在職老齢年金制度についてのオプション試算

この点、資料3-1において、
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000540587.pdf
「65歳以上の在職老齢年金の仕組みを緩和・廃止した場合」の以下の2つの試算結果が提示されています。

(1) 給付調整の基準額を引き上げた場合(47万→62万)

(2)在職老齢年金制度を撤廃した場合

どちらの場合も、将来、厚生年金の報酬比例部分の年金の所得代替率を下げることにつながる、と報告されました。

65歳からの在職老齢年金制度の基準額を引き上げて緩和したり、廃止したりすると、将来世代の年金の水準が下がってしまうということですね。

なお、この、65歳からの在職老齢年金制度の緩和・廃止見直し試算は、「試算の便宜上、2026年度より見直しをした場合として試算」したものであり、
「在職老齢年金の見直しによる就労の変化は見込んでいない」そうです。

関連記事

  1. 老齢厚生年金

    企業年金連合会からの年金ももらえる場合の注意点とは

    厚生年金基金にも入っていた期間がある人の年金の「もらいもれ」厚生年…

  2. お知らせ

    「骨太の方針」2019年(令和元年)6月21日 に記載されている年金改革とは

    「経済財政運営と改革の基本方針2019について」が令和元年6月21日閣…

  3. 60歳からの働き方

    サラリーマン夫婦2人の生活費(最低限必要な金額・ゆとりある生活のために必要な金額)と年金額

    老後の夫婦二人の日常生活費はいくらくらい必要か夫婦二人の日常生活費は…

  4. 老齢厚生年金

    年金の繰上げは得か損か?(老齢基礎年金・老齢厚生年金) デメリットは?

    65歳までの特別支給の老齢厚生年金は「繰上げ」も「繰下げ」もできない…

  5. 老齢厚生年金

    これから定年を迎えるサラリーマン 年金をいくらもらえるのか

    65歳からの年金のうちの「老齢基礎年金」の年金額の計算方法と満額の老齢…

  6. 定年

    退職後、雇用保険から失業給付をもらうと年金はどうなるのか

    失業給付(求職者給付)の種類 65歳までの基本手当と、65歳からの高年…

おすすめ記事

最新記事

  1. 令和5年度(2023年度)の全国健康保険協会(協会けんぽ)保…
  2. つみたてNISA 令和5年(2023年) よくある質問
  3. 個人事業主・フリーランスや小規模法人経営者が影響を受ける今後…
  4. 令和6年の次回財政検証・令和7年の次回公的年金改正に向けて、…
  5. 新設・拡充予定の雇用助成金と令和3年度会計検査院検査報告
  1. 老齢厚生年金

    受給資格期間(10年以上)を満たし、厚生年金保険に1か月でも加入すると老齢基礎年…
  2. 健康保険・厚生年金保険

    個人事業を法人化(法人成り)したときの厚生年金保険料・健康保険料について
  3. 在職老齢年金

    65歳からの在職老齢年金基準額見直し案(51万円)と65歳までの基準額見直し案(…
  4. 定年

    退職後、雇用保険から失業給付をもらうと年金はどうなるのか
  5. 60歳からの働き方

    60歳まで・年金をもらう年齢になるまでに知っておきたい・調べておきたいこと
PAGE TOP