年金改正

人生 100 年時代に相応しい全世代型社会保障制度構築・「幸齢社会」の実現などが自民党の政策集に記載

2020年6月16日に自由民主党の「総合政策集2022 J―ファイル」が公表されました。

https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/20220616_j-file_pamphlet.pdf

基本的に、6月7日に閣議決定された「骨太方針2022」の方向性に沿った内容となっているようです。

今般公表された「総合政策集2022 J―ファイル」の中には、年金についての項目もあります。

今後の年金改正の方向性を読み解くために、年金関連の項目からポイントを下記に引用します。
(適宜、原文を読みやすいように改行したり、太字表記を使用いたします)

まず、
「304 経済社会の変化を踏まえた納税環境の整備」の項目で、
マイナンバーを用いた年金をはじめとする社会保障サービスの向上や所得課税の更なる適正化を図ります。」
とされています。

ただ、
「民間人となった日本年金機構の職員が行っている年金保険料の徴収業務を公務員である国税庁の職員が行う、
いわゆる歳入庁構想には反対です。」と明記されています。

また、次のような項目もあります。

●323 全世代型社会保障の構築

成長と分配の好循環を実現するため、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心となっているこれまでの社会保障の構造を見直し、
全ての世代で安心できる持続可能な「全世代型社会保障」の構築に向け、計画的に取組みを進めます。

社会保障制度の担い手を確保するとともに、男女が希望通り働ける社会をつくる「未来への投資」として、
出産育児にかかわる不安を解消し、仕事と子育てを両立できる環境整備を更に進めます。

また、働き方の多様化が進む中で、「勤労者皆保険」の実現に向けた取組みを進め、
働き方に中立的な社会保障制度を構築していきます。

 

●324 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立

若者の給付水準の確保等を図るための制度改革に取り組み、
若者も高齢者も安心できる持続可能な年金制度を確立します。

2020 年に成立した年金改正法により、
2022 年10 月から 101 人以上、2024 年 10 月から 51 人以上の企業で働く短時間労働者にも、
被用者保険が適用され、保障が充実されることになりました。
施行に向けて、着実に準備を進めます。
また、年金改正法では、60~64 歳の在職老齢年金制度の支給停止基準額の緩和や、
在職定時改定の導入、受給開始時期の選択肢の拡大を行い、
高齢期の経済基盤の充実を図りました。

被用者保険の更なる適用拡大や、基礎年金給付水準の確保等について、
引き続き検討を進めます。

企業年金・個人年金についても、
2020 年に成立した年金改正法により加入可能年齢を引き上げるとともに、
拠出限度額の見直しを行いました。
公平な制度の構築に向けて引き続き検討を進めます。

(奥野注)
2019年(令和元年)に行われた国民年金・厚生年金保険の財政検証結果から、
「経済成長と労働参加を促進することが、年金の水準確保のためにも重要」であるとされ、
厚生年金保険の加入対象者を広げること(適用拡大)が、
所得代替率や、基礎年金の水準確保に効果が大きいとされていました。

それを受けて、そこで、2020年度(令和2年度)年金法改正により、
2022年(令和4年)10月から、2024年(令和6年)10月からと
少しずつ厚生年金保険の適用拡大が実施されることとなりました。

また、2019年(令和元年)財政検証では、
「就労期間・加入期間を延長することや、繰下げ受給を選択することは、
年金の水準確保に効果が大きい」とされ、
2020年度(令和2年度)年金法改正により、
在職老齢年金の見直し(65歳までの基準額の引き上げ)・在職定時改定や
最高75歳までの繰下げ制度のみが実施されることとなりました。
(これらの改正は、2022年度(令和4年度)から実施されました)

2019年(令和元年)財政検証の際のオプション試算では、
基礎年金の給付水準を底上げするには、
・厚生年金保険の適用拡大をもっとすすめること

・基礎年金給付算定時の納付年数の上限を現在の40年(20~60歳)から45年(20~65歳)に延長し、
納付年数が伸びた分に合わせて基礎年金が増額する仕組みとすること
が有効だ、と明らかになっていました。
https://www.mhlw.go.jp/content/000540198.pdf

これらについては、令和4年度法改正では見送られましたが、
今後、検討が行われる可能性があります。

●325 年金制度の着実な運営

年金積立金の運用は、2001 年の自主運用開始以来、約 107.6 兆円の黒字となっています。
更に安全かつ効率的に運用するため、
積立金の運用を専門的に行っている法人(GPIF)の組織体制を強化します。

年金記録問題の更なる解明と迅速な救済、
年金個人情報に対して攻撃が及ばないシステムの構築などのセキュリティ対策により、
引き続き年金への信頼確保に努めます。

 

その他、「385 「幸齢社会」の実現」の項目で、

「高齢者が幸せに年齢を重ねられるよう、
年齢にかかわらず働き続けられる社会の構築、
地域社会での活躍の場の創出を進め、
社会の担い手として活躍できる「幸齢社会」を実現します。」
としたうえで、

(社会保障関係)として、次の内容が列挙されています。

・能力に応じてみんなが支え合い、人生のステージに応じて必要な保障を行う、
人生 100 年時代に相応しい全世代型の社会保障制度を構築
・健康シニアに対する健康保険や介護保険のインセンティブ
(ポイント等を通じた保険料減額等)の付与
・年金の繰り下げ制度の活用、普及

 

以上のように、今回公開された自民党政策のポイントを一読するだけでも、
今後の年金法改正に向けての検討内容の大まかな方向性が見えてきます。

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