もくじ
国民年金保険料を納めることが経済的に難しい場合は、未納のまま放っておかずに免除などを受けておく
国民年金保険料は、20歳0か月目分から59歳11カ月目分まで1か月ももらさずに納めることが望ましいです。
しかし、40年間のうちには、保険料を納めるのが経済的に難しいときもあるかもしれません。
そのようなときでも、保険料未納のまま放っておいてはいけません。国民年金保険料の免除などを受けておくようにしましょう。
保険料免除などの制度の概要
国民年金保険料を納めるのが経済的に難しいときのために、申請をすれば、国民年金保険料を納めなくてもよいことにしてくれる、次の3つの制度が準備されています。
(1)申請全額免除・一部免除制度
本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請するときは前々年の所得)が一定額以下の場合には、申請により保険料が全額または一部免除となります。
一部免除制度には、次の3つがあります。
・4分の1免除(4分の3に減額された保険料を納めます)
・半額免除(半額に減額された保険料を納めます)
・4分の3免除(4分の1に減額された保険料を納めます)
(2)納付猶予制度
50歳未満の人(学生以外の人)で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請するときは前々年の所得)が一定額以下の場合には、申請により保険料の納付が猶予されます(2030年6月までの特例措置です)。
(3)学生納付特例制度
学生で、本人の前年所得(1月から3月までに申請する場合は前々年の所得)が一定額以下の場合には、申請により保険料の納付が猶予されます。
法定免除制度もある
これらのほか、障害基礎年金を受けている場合や生活保護の生活扶助を受けている場合などに、届出により保険料の全額が免除される「法定免除制度」もあります。
免除などが認められる所得基準は?
免除などが認められる所得基準は、以下の通りです(以下の数字は所得基準であって、年収基準ではありません)。
(1)全額免除・一部免除
・全額免除:(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
・4分の3免除:78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
・半額免除:118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
・4分の1免除:158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(2)納付猶予制度
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
(3)学生納付特例制度
118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等
その他保険料免除などの対象となる場合(天災、失業等)
その他、次のような場合も免除などの対象となります。
・生活保護法の生活扶助以外の扶助を受けているとき
・地方税法に定める障害者または寡婦で、前年の所得が125万円以下
(2021年4月からは、未婚のひとり親等も寡婦と同様に対象に追加され、所得基準が135万円となる予定です)
・天災、失業など保険料を納めることが著しく困難な事由があるとき
免除などを受けた期間は、老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)に含まれる
国民年金保険料の免除などを受けた期間は、保険料未納期間としては取り扱われないため、老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)に算入されます。
免除などを受けなかったため保険料未納期間が長くなり、老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)を満たしていないと、老齢基礎年金を1円ももらえなくなってしまいます。
保険料を納めるのが経済的に難しいときは、免除などを受けておくことが大事です。
上記(1)~(3)とも、過去2年分(申請月の2年1か月前の月分)までさかのぼって申請することができます。
免除を受けておけば、老齢基礎年金額に一部反映する
基礎年金の半分は、国の負担(税金)でまかなわれています。
ですから、国民年金保険料の免除を受けた月についても、将来もらえる老齢基礎年金額に一部(国が負担してくれる分だけ)反映します。
(例)20歳以上60歳未満の40年(480か月)にわたって、ずっと全額免除(または法定免除)を受けると・・・
全額免除(または法定免除)を受けた期間がすべて平成21年4月以降なら、480月とも1/2だけ老齢基礎年金額に反映します。
国民年金保険料を一月も納めたことがなくても、国が必要な費用の半分を負担してくれるため、約39万円の年金(満額の老齢基礎年金約78万円×1/2 )を一生もらえます。
全額免除(または法定免除)を受けた期間のうち平成21年3月以前の月については、1/3だけ老齢基礎年金額に反映します。
一部免除を受けた期間は、減額された保険料を納めていれば、次のとおり老齢基礎年金額に反映します
(1)2009年4月以降の期間
・4分の1免除期間:7/8
・半額免除期間:6/8
・4分の3免除期間:5/8
(2)2009年3月以前の期間
・4分の1免除期間:5/6
・半額免除期間:4/6
・4分の3免除期間:3/6
一部免除を受けたのに、減額された保険料を納めていない場合は、保険料未納扱いとなります。
納付猶予や学生納付特例を受けた期間は、そのままでは、老齢基礎年金額に反映しない
全額免除・法定免除を受けた期間や一部免除を受けて減額された保険料を納めた期間と違い、納付猶予や学生納付特例を受けた期間は、保険料をあとから下記の「追納」制度を利用して納めない限り、老齢基礎年金額にはまったく反映しません。
免除などの申請書の提出先
免除などの申請書は、お住いの市区役所・町村役場の国民年金担当窓口またはお近くの年金事務所へ提出ください。
郵送による提出もできます。
代行事務を行う許認可を受けている学校等に在学中の場合は、学生納付特例の申請書を学校等に提出することもできます。
申請書のダウンロードや、記載例、添付書類などの確認は、日本年金機構ホームページでもできます。
「ねんきんネット」(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)の画面上で、免除などの申請書を作成することもできます
「ねんきんネット」では、生年月日などの基本情報が自動表示されるため、入力時の手間が省け、入力の誤りも防げます。
「ねんきんネット」の利用にあたっては、ご利用登録が必要です。登録方法は、「ねんきんネット」ホームページをご覧ください。
過去に免除などを受けた期間がある人は、保険料を「追納」できる
すでにみた通り、国民年金保険料の免除を受けた期間は、老齢基礎年金額に一部しか反映しません。
また、納付猶予や学生納付特例を受けた期間は、老齢基礎年金額にまったく反映しません。
免除や納付猶予などを受けたままにしておくと、将来もらえる老齢基礎年金額が少なくなってしまいます。
そこで、免除や納付猶予などを受けた分の保険料は、10年以内であれば、あとから納めること(追納)ができるようになっています。
追納すると、国民年金保険料を納めた期間として扱われますので、老齢基礎年金額に完全に反映することとなります。
(例1)全額免除期間の保険料を1年分追納すると、老齢基礎年金が年額約1万円、一生にわたって増えます。
(満額の老齢基礎年金約80万円×1/2×12か月/480か月)
(例2)納付猶予期間の保険料を1年分追納すると、老齢基礎年金が年額約2万円、一生にわたって増えます。
(満額の老齢基礎年金約80万円×12か月/480か月)
(注)例1・例2とも、老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)を満たしていることを前提としています。
また、追納保険料も社会保険控除の対象となりますので、その年の所得から控除でき、所得税・住民税の節税につながります。
未納分の保険料が時効(2年間)を過ぎると、追納できない
10年以内であれば追納できるのは、免除や納付猶予などを受けた期間に限られます。
免除や納付猶予などを受けずに未納となっていた保険料は追納の対象となりません
未納保険料は時効の範囲内(過去2年以内)分の保険料しか、さかのぼっておさめることができません。
経済的に保険料を納めることが難しい期間が長引いたとしても、後から余裕ができたら追納ができるように、保険料を未納のまま放っておくのではなく、免除や納付猶予などを受けておくことが重要です。
なお、一部免除を受けた期間に、残りの納付すべき保険料を納めていない場合は、追納できません。
3年度目以降に追納すると加算が付く
追納は10年以内であればできますが、免除や納付猶予などを受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に保険料を追納する場合は、加算額が上乗せされます。
つまり、3年度以前(例えば、2020年度に追納する場合は、2017年度以前)の保険料には加算が付きます。
余裕ができたら、なるべく早めに追納をするのがよいでしょう。
追納申込書は日本年金機構ホームページでもダウンロードできます。
「ねんきんネット」の画面上でも作成できます。
追納申込書の提出先は最寄りの年金事務所です。
郵送による提出もできます。
追納が認められると納付書をもらえますので、その納付書で納めます。
国民年金保険料を未納のまま放っておかずに、免除などの手続きをしておくべき理由(まとめ)
・老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)にカウントされます。
・免除期間は老齢基礎年金額に一部反映されますので、老齢基礎年金額が増えます。
・要件を満たせば、障害基礎年金・遺族基礎年金も支給されます。
・免除期間も寡婦年金・死亡一時金額に反映します。
・後でお金の余裕ができたときには、10年以内の免除などを受けた期間について追納すると、老齢基礎年金の額を増やせます(追納)。
(比較)国民年金保険料を未納のまま放置し、督促状の指定期限を超えると、延滞金がかかります。なお、一定の所得がありながら長期間滞納している場合、強制徴収(差し押さえ)が行われます。