退職金・老後資金積立

個人事業主・フリーランスの老後資金積立や投資の一般的な優先順位について

個人事業主・フリーランス向けの年金・社会保険セミナーでお話ししていると、
以下の各制度のうちどれから活用すればよいでしょうか、
との質問を受けることが多いです。

・国民年金の付加保険料を納める
・国民年金基金に加入する
・個人型型確定拠出年金(iDeCo)に加入する
・つみたてNISAまたはNISAを始める
・小規模企業共済に加入する
・個人年金に加入する
・医療保険に加入する
・所得補償保険や就業不能保障保険に加入する
など・・・

これは、どういう備えを優先したいかや、年齢・家族構成・所得・預金等の資産額により、各人異なります。

ただ、ある程度の預金額・所得があるという前提で、比較的多くの方にあてはまるだろうという一般的な
優先順位をお示しすると、次の通りとなるかと思います。

1.付加保険料

まず、老後資金を増やしたいということであれば、付加保険料を納められる人はなるべく若いころから納めておくとよいでしょう。

月々400円納めれば、65歳からの老齢基礎年金の上乗せとして付加年金(付加保険料納付済期間の月数×200円)
が上乗せされます。

付加保険料を30年納めたとしても、付加年金は年額72,000円と少ないですが、
65歳からもらえる老齢基礎年金を繰下げた場合は、
老齢基礎年金だけでなく付加年金も、繰下げ月数(最高120月)×0.7%増額されます。

なお、20歳から60歳になるまでに年金保険料未納期間がある人は、
60歳以降も国民年金に任意加入しつつ付加保険料も納め続けると効果的です。

ただ、付加年金は老齢基礎年金と異なり、物価・賃金が上がっても年金額は増えません。

また、国民年金に加入している人が法人代表者・役員等として厚生年金保険に加入すると、
国民年金保険料も付加保険料も納められなくなります。

2.小規模企業共済

老後資金・廃業時の退職金等の積み立てとしては、
国の機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する「小規模企業共済」
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/
の活用も優先度が高いでしょう。

掛金が全額所得控除となるなどの税務上のメリットに加え、
一般貸付、緊急経営安定貸付、傷病災害時貸付等さまざまな貸付制度が用意されています。

老後資金・廃業時の退職金等の積み立てを税法上有利に行いながら、
途中でお金が必要となった場合には、掛金を納めた期間に応じた貸付限度額の範囲内で低金利の貸付を利用することもできます。
(新型コロナ特例措置としての特例緊急経営安定貸付は無利子)

長い職業生活の間には所得が不安定な時期もあると思いますので、
積立だけでなくいざというときにも使える途がある点は安心です。

ただ、掛金納付月数が240か月(20年)未満で任意解約をした場合は掛金合計額を下回る金額しか戻ってこない、
などの注意点があります。

中小機構ホームページ
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/
を確認して不明点があれば問い合わせた上で利用すればよいでしょう。

3.つみたてNISA

投資初心者が運用益の非課税メリットを享受しながら長期・積立・分散投資を行ないたい場合は、
つみたてNISA
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/tsumitate/overview/index.html
の活用もよいでしょう。

ネット証券(楽天証券やSBI証券など)で口座を開設して、
「全世界株式インデックスファンド」(全世界株型インデックス投資信託)に毎月同額を投資し続け、
基準価額の上がり下がりに一喜一憂せずに長期的に持ち続けておくのが一番簡単です。

(非課税で老後資金を積み立てるのはiDeCoでもでき、
iDeCoには掛金が全額所得控除となるメリットもありますが、
60歳まで引き出せません。
それに対し、つみたてNISAはいざとなったら途中換金もできますので、
突発的な資金需要にも対応できます。)

ただし、投資ですので、元本保証ではありません。
つみたてNISA資金額が投資額合計を下回ることもあり得ますが、
一喜一憂せずに淡々と毎月投資を続けることが重要です。

つみたてNISAは最高でも年40万円しか投資できないため、
余裕資金で投資するのであれば、大きく家計を狂わせるほどの失敗は生じにくいですが、
余裕資金が少ないなどで、投資したお金が減るリスクを許容できない場合は、
利用しないようにしましょう。

つみたてNISA上限の年間40万円を超えてさらに投資をしたい余裕がある場合は、
60歳までは引き出せないことを理解した上で、iDeCoも活用すればよいでしょう。

国民年金加入の間は、(国民年金の付加保険料または国民年金基金の掛金との合算で)
月額6.8万円(年額81.6万円)まで利用できます。

社長・役員等として厚生年金保険に加入すると、
iDeCo掛金は月額2.3万円(年額27.6万円)限度となります(会社の企業年金がない場合)。

社長・役員等として厚生年金保険に加入して、
企業年金として企業型確定拠出年金のみがある場合は、
iDeCoの掛金限度額は月額2万円(年額24万円)です。

以上、個別のケースや、お一人お一人の価値観等によってさまざまな考え方があるかと思いますが、
一つのご参考までに、一定額の預金等がある個人事業主・フリーランスの方の場合で、
私(奥野)の考える一般的な優先検討順位をお伝えしました。

これら以外の制度も含め、様々な制度がありますが、
すべて使える状況にある人は多くはないでしょう。

焦る必要はありませんので、使える状況にある方は徐々に活用していかれればよいかと思います。

起業して間もないころは資金的な余裕がなくてなかなか老後資金積立や投資ができないケースも多いでしょうが、
その場合、まずは何よりも事業経営を軌道に載せ安定的に所得を上げていける状態にすることに注力したいところです。

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