老齢厚生年金

これから定年を迎えるサラリーマン 年金をいくらもらえるのか

65歳からの年金のうちの「老齢基礎年金」の年金額の計算方法と満額の老齢基礎年金

サラリーマンが老後にもらえる老齢年金には
・65歳までの年金(特別支給の老齢厚生年金)と
・65歳からの年金(老齢基礎年金および老齢厚生年金)があります。

これらの中で、年金がいくらもらえるかを簡単に計算できるのは、65歳からの年金のうちの「老齢基礎年金」です。

そこで、老齢基礎年金をいくらもらえるかを最初に確認しておきましょう。

65歳からの老齢基礎年金の年金額の計算は簡単です。

65歳からもらえる老齢基礎年金の年金額は、「20歳以上60歳未満(20歳になる月から60歳になる月の前月まで)の40年間のうち、何年間公的年金制度に入ったか」によって決まるのが原則です。

厚生年金や国民年金など公的年金に20歳から60歳になるまでの40年間切れ目なく入った人は、65歳から全国民共通の老齢基礎年金が満額もらえます。

満額の老齢基礎年金は年額80万円弱です。
(平成30年度の満額の老齢基礎年金は779,300円)

例えば、18歳で高校を卒業した翌月から会社に勤め、60歳になるまでずっと厚生年金に入ってきた人は、そのうち20歳以上60歳未満の40年間は国民年金にも入っていたこととなります。(年金用語では、「厚生年金被保険者は国民年金の第2号被保険者でもある」といいます。)

給料から毎月厚生年金保険料が引かれていただけで、国民年金保険料を自分で納めた期間はないのですが、65歳になると満額の老齢基礎年金をもらえます。

例えば、20歳から大学卒業までの36月間国民年金に任意加入しなかったため国民年金保険料を1月も支払わなかったものの、22歳で大学を卒業した翌月から60歳になるまでの444月ずっと厚生年金に入っていた人の場合は、20歳以上60歳未満の480月のうち444月だけ公的年金に入ったことになります。

(注1)平成3年3月31日までは20歳以上の学生は国民年金に強制加入ではなくて、任意加入でした。

(注2)20歳になった月から学生であった月数は、誕生日などによってひとりひとり異なります。

この人がもらえる老齢基礎年金の年金額は、次のように計算されます。

・老齢基礎年金額=779,300円×(444月/480月)=720,853円(1円単位・50銭未満切り捨て、50銭以上切り上げ)

公的年金に入るべき20歳以上60歳未満の480月のうち444月月だけ入ったので、満額の老齢基礎年金額の「480分の444」を65歳からもらえる、ということです。

このように、老齢基礎年金額は、20歳以上60歳未満の40年間(480月)のうち、何月公的年金に入って保険料を納めた月があるかによって決まるのが原則です。

・老齢基礎年金の年金額=満額の老齢基礎年金の年金額×20歳以上60歳未満の間に公的年金に入って保険料を納めた月数÷480月

(国民年金保険料を免除された期間がない人の場合)

20歳以上60歳未満の40年間公的年金に入って保険料を納めれば、満額の老齢基礎年金を80万円弱もらえるわけですから、ざっくりいえば、
・65歳からもらえる老齢基礎年金の額=20歳以上60歳未満の40年間のうち公的年金に入って保険料を納めた年数×2万円弱

となります。

20歳以上60歳未満の間に会社を退職して、別の会社に転職するまでの間払う負担すべき国民年金保険料が未納となっていた期間がある人なども、満額の老齢基礎年金をもらえないこととなります。

(注1)昭和61年4月1日以降、20歳以上60歳未満の間に、厚生年金や済年金に入っている人(原則65歳未満の人)の「被扶養配偶者」となっていた期間(国民年金の「第3号被保険者」期間)がある人は、その期間の月数も「公的年金に入って保険料を納めた月数」にカウントされ、老齢基礎年金額に反映します。

国民年金保険料を免除されていた期間がある人の老齢基礎年金額

会社員期間以外に自営業・無職の期間などがあり、国民年金保険料を免除されていたことがある人の老齢基礎年金額計算は次の通り複雑になります。

・老齢基礎年金額=満額の老齢基礎年金額×(①+②+③+④+⑤)÷480月

①公的年金に入って保険料を納付した月数

②保険料全額免除期間の月数×4/8(平成21年3月以前の期間は2/6)

③保険料3/4免除期間の月数×5/8(平成21年3月以前の期間は3/6)

④保険料半額免除期間の月数×6/8(平成21年3月以前の期間は4/6)

⑤保険料1/4免除期間の月数×7/8(平成21年3月以前の期間は5/6)

65歳までの「特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)」の年金額の計算方法 

65歳までの年金(特別支給の老齢厚生年金)は「報酬比例部分」と「定額部分」に分かれます。

ただし、これから年金をもらえる年齢になる人は、「定額部分」の年金はもらえず、「報酬比例部分」の年金だけをもらえるのが原則です。

特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額の計算は難しいです。

特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額の計算式は次の通りです。(原則的な計算式)

・平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月までの厚生年金に入った期間の月数

+平均標準報酬×5.481/1,000×平成15年4月からの厚生年金に入った期間の月数

(注)

・平均標準報酬月額とは:平成15年3月までの月給を平均した額のこと。
平均標準報酬月額=平成15年3月までの各月の給料月額(標準報酬月額)の総額÷平成15年3月までの厚生年金に入った期間の月数

・平均標準報酬とは:平成15年4月からの年収(ボーナスを含む)の月割額を平均した額のこと。
平均標準報酬額=平成15年4月からの各月の給料月額(標準報酬月額)と賞与額(標準賞与額)の総額÷平成15年4月からの厚生年金に入った期間の月数

・標準報酬月額とは:給料月額(基本給や通勤手当などの手当、残業代を含めた額面金額)を一定の幅で定められた等級区分にあてはめて決定される額。

・標準賞与額とは:その月に受けたボーナス(賞与)合計額の千円未満を切り捨てた額

平成15年4月から、ボーナス(賞与)も報酬比例部分の年金額に反映するようになりましたので、平成15年3月まで・平成15年4月からの二つの期間に分けて計算した結果を合計して年金額が算出されます。

計算式からわかるように、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額は、厚生年金に入った期間の月数、各月の給料の額、平成15年4月以降に受けたボーナスの額によって決まります。

・60歳以降特別支給の老齢厚生年金をもらえる年齢になる前月までの間に厚生年金に入って働くと、その期間も含めて「平成15年4月からの厚生年金に入った期間」が計算されます。

・その期間に受けた給料・ボーナスも含めて「平均標準報酬額」が計算されます。

しかし、平均標準報酬月額や平均標準報酬額を自分で計算することは難しいです。(過去の標準報酬月額・標準賞与額をすべて現在の価値に読み替える「再評価」を行って計算する必要があるため)

また、上記の原則的な計算式でなく、平成12年法改正前の計算式を用いた方が年金額が多くなる場合は、そちらの年金額を支払ってくれます。

したがって、報酬比例部分の年金額を一般の方がご自分で正確に計算することは、難しいです。

・厚生年金に長く入れば入るほど、
また、

・厚生年金に入っている間にもらった給料の額・平成15年4月以降にもらったボーナスの額が多ければ多いほど、

報酬比例部分の年金額は多くなる。

以上のことを理解するだけに留めておいて、実際の年金見込額については、「ねんきん定期便」・「ねんきんネット」や、年金事務所の年金相談で確認する方が現実的でしょう。

65歳からの老齢厚生年金「報酬比例部分」の年金額計算式

65歳からの老齢厚生年金は、正確には、二つの部分に分かれます。

65歳からの年金のうち「老齢厚生年金」は、正確には、「報酬比例部分」と「経過的加算部分」に分かれます。

このうち、「報酬比例部分」の年金額の計算式は次の通りです。

・平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月までの厚生年金に入った期間の月数

+平均標準報酬×5.481/1,000×平成15年4月からの厚生年金に入った期間の月数

65歳までの特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分の計算式とまったく同じです。

ですから、特別支給の老齢厚生年金をもらえる年齢になってから65歳になる月の前月までの間に厚生年金に入らなかった人の場合は、

65歳までの特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)額=65歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分)額となります。

 

特別支給の老齢厚生年金をもらえる年齢になってから65歳になる月の前月までの間に厚生年金に入った人の場合は、その分の加入期間の月数や各月の給料・ボーナスの額も年金額に反映します。

(ただし、実際に年金額に反映するのは、退職して1月経ったとき・65歳になったとき、のいずれか早い方からです。)

 

65歳になってからも70歳になるまでの間に厚生年金に入った人の場合は、その分の加入期間の月数や各月の給料・ボーナスの額も年金額に反映します。

(実際に年金額に反映するのは、退職して1月経ったとき・70歳になったとき、のいずれか早い方からです。)

そのほか、老齢厚生年金には「経過的加算部分」もあります。(差額加算ともいいます)

ただ、学校を卒業してすぐに会社に入社し、定年までずっと年厚生年金に入ってきたサラリーマンの場合は、
経過的加算部分の年金額はごく少額となりますので、ここでは省略します。

毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」の年金見込額(65歳まで・65歳から)

・毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」には、65歳まで・65歳からの年金見込額が書かれています。

 

50歳以上で特別支給の老齢厚生年金をもらう前の人には、毎年誕生月に日本年金機構から年金見込額が記載された「ねんきん定期便」が郵送されてきます。(60歳以上の人は、公的年金に入っている人のみ)

59歳の誕生月には、水色のA4版の封筒に入った「ねんきん定期便」が送られてきます。

59歳以外の誕生月には、ハガキ形式の「ねんきん定期便」が送られてきます。

どちらの「ねんきん定期便」にも、国からもらえる65歳までの「特別支給の老齢厚生年金」の見込額と65歳からの「老齢基礎年金」・「老齢厚生年金(報酬比例部分・経過的加算部分)」の見込額が記載されています。

50歳以上60歳以下の人に届く「ねんきん定期便」に記載されている年金見込額は、確定の年金額ではありません。

現在の給料のまま60歳まで厚生年金に入って働き続けたら、65歳までの年金額・65歳からの年金額はいくらになるか、という見込額が書かれています。

 

60歳を過ぎて年金をもらう前に厚生年金に入っている人に届く「ねんきん定期便」

60歳を過ぎて年金をもらう前に厚生年金に入って働いている人のもとに毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」にも65歳まで・65歳からの年金見込額が記載されています。

例えば、厚生年金に入って働いている特別支給の老齢厚生年金を64歳からもらえる男性のもとに、61歳・62歳・63歳・64歳の誕生月に届く「ねんきん定期便」に記載されている年金見込額は、60歳以降厚生年金に入った記録も含んで計算されています。

特別支給の老齢厚生年金をもらいながら厚生年金に入っている人に届く「ねんきん定期便」

特別支給の老齢厚生年金をもらいながら厚生年金に入っている人のもとにも毎年誕生月に「ねんきん定期便」が届きます。

しかし、年金見込額はもう記載されません。

50歳未満の人に届く「ねんきん定期便」

50歳未満の人に届く「ねんきん定期便」にも年金見込額は記載されていません。

代わりに、これまでの年金加入記録だけに基づいて計算した年金額が記載されています。

関連記事

  1. 老齢基礎年金

    65歳からの老齢基礎年金は満額で約78万円もらえる

    20歳以上60歳未満の40年間(480月)切れ目なく国民年金、厚生年金…

  2. 老齢基礎年金

    国民年金保険料の免除・納付猶予と追納 老齢基礎年金の年金額への影響は?

    国民年金保険料を納めることが経済的に難しい場合は、未納のまま放っておか…

  3. 企業年金

    令和6年の次回財政検証・令和7年の次回公的年金改正に向けて、議論が開始

    国民年金・厚生年金保険は、少子高齢化が続いても制度が持続的に維持される…

  4. 60歳からの働き方

    サラリーマンが定年後も働く場合。60歳からの働き方と年金 厚生年金保険と雇用保険

    60歳からの働き方・雇用条件と、厚生年金保険、雇用保険60歳からの雇…

  5. 老齢厚生年金

    老齢厚生年金に加算される加給年金額とは

    厚生年金保険加入期間(共済組合等加入期間を含みます)が20年以上ある人…

  6. お知らせ

    「骨太の方針」2019年(令和元年)6月21日 に記載されている年金改革とは

    「経済財政運営と改革の基本方針2019について」が令和元年6月21日閣…

おすすめ記事

最新記事

  1. 令和5年度(2023年度)の全国健康保険協会(協会けんぽ)保…
  2. つみたてNISA 令和5年(2023年) よくある質問
  3. 個人事業主・フリーランスや小規模法人経営者が影響を受ける今後…
  4. 令和6年の次回財政検証・令和7年の次回公的年金改正に向けて、…
  5. 新設・拡充予定の雇用助成金と令和3年度会計検査院検査報告
  1. 年金改正

    「年金制度の仕組みと考え方」と次回年金改正
  2. 年金改正

    次期年金制度改正の基本的な考え方と今後の議論の大きな柱二つ
  3. 改正

    個人事業主・フリーランスや小規模法人経営者が影響を受ける今後の改正案・議論の方向…
  4. 60歳からの働き方

    60歳以降も厚生年金に加入して働くことのメリット・デメリットとは
  5. 老齢厚生年金

    受給資格期間(10年以上)を満たし、厚生年金保険に1か月でも加入すると老齢基礎年…
PAGE TOP