60歳からの働き方

60歳定年後再雇用で、給料が下がった状態で働くと、年金はどうなるのか

定年後再雇用では、給料が下がった状態で働く人も多い

「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」(2016年5月 独立行政法人労働政策研究・研修機構)では、フルタイム勤務の継続雇用者の賃金について次のようなデータがあります。

「61歳時点の賃金水準が平均的な水準の継続雇用者については、60 歳直前の水準を 100 とした場合に、61 歳時点の賃金水準が「60 以上 70 未満」にあたるという企業が 18.3%で最も多い。」

60歳以降の無年金期間が長くなっていく中、この調査が行われた2015年7月当時に比べると、定年後の賃金がそれほど低下しないようにしている企業もあるでしょう。

ただ、「フルタイム勤務」でも、継続再雇用後の業務内容、責任の程度、転勤・職務内容変更・配置転換の有無などが定年前と変わることによって、給料が下がることはありえます。

フルタイム勤務ではないパートタイム勤務で再雇用される場合は、かなり給料が下がった状況で働く人もいるでしょう。

60歳以降給料が下がった状態で働いたらどうなるのでしょうか。

次の三点について、順番にみていきましょう。

1.雇用保険からもらえる「高年齢雇用継続給付」について

2.特別支給の老齢厚生年金をもらい始めてからの年金と給料の調整のしくみ

3.特別支給の老齢厚生年金と「高年齢雇用継続給付」の調整のしくみ

60歳以降厚生年金に入って働く場合は、1~3について知っておく必要があります。

60歳以降雇用保険には入るけれど厚生年金には入らない働き方をする場合は、1だけ知っておけば構いません。

60歳以降雇用保険にも入らない働き方をする場合は、どれも関係ありません。

雇用保険保険からもらえる「高年齢雇用継続給付」について

60歳定年後、失業給付(「基本手当」)をもらうことなく引き続き再雇用されている人などの給料が、60歳到達時に比べて大きく下がったら、
補てんのために、雇用保険から「高年齢雇用継続給付」(高年齢雇用継続基本給付金)という給付がもらえます。

次の要件をすべて満たしている間は、高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金)がもらえます。

・60歳以上65歳未満(60歳になった月~65歳になる月までの間
・月の初日から末日まで引き続き雇用保険に入っていること

・雇用保険の被保険者期間が5年以上あること

・60歳以後の賃金月額が60歳到達時の賃金月額(60歳到達前6か月の平均賃金。通勤手当などの手当や残業代を含む。ボーナスは含まない。)の「75%未満」に下がっていること

・60歳以降の賃金月額が359,899円未満*であること。

(注)
・60歳到達時の賃金月額が472,200円*を超えていた場合は、60歳到達時の賃金月額を472,200円として賃金の低下率を計算します。
・支給対象月に受けた賃金の額+算定算出された給付金の額>359,899*円となるときは、「359,899円-支給対象月に支払われた賃金の額」が給付金の支給額となります。
・算定された給付金の額が1,948円*を超えない場合は、給付金は支給されません。

・*の各数字は、2019年7月31日までの額です。(毎年8月1日に改定されます。)

高年齢雇用継続給付は、60歳以降の賃金月額が60歳到達時の75%未満に下がれば支給されますが、
61%以下に下がったときに、最も支給率が高くなります。

(高年齢雇用継続給付の支給額)

・賃金月額が60歳到達時の61%以下に下がったら→60歳以降の賃金月額×15%

・賃金月額が60歳到達時の61%超75%未満に下がったら→60歳以降の賃金月額×15%から一定の割合で逓減する率

・賃金月額が60歳到達時の75%以上なら→支給されない。

例えば、60歳到達時の賃金月額が40万円、定年後再雇用時の賃金月額が24万円の場合、再雇用後の賃金月額は61%以下(60%)に低下しています。

ですから、雇用保険から高年齢雇用継続給付が36,000円(再雇用後の賃金月額24万円×15%)支給されます。
(雇用保険からもらえる給付は非課税です。)

(注1)失業給付(「基本手当」や「再就職手当」)を受けずに退職後原則1年以内に再就職した場合でも、要件を満たせば「高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金)」がもらえます。

(注2)基本手当の支給残日数100日以上で再就職した場合、要件を満たせば「高年齢雇用継続給付(高年齢再就職給付金)」をもらえます。
ただし、例えば、所定給付日数の残日数が100日以上200日未満の場合なら、給付金をもらえる期間は1年間と短いです。
「高年齢雇用継続給付(高年齢再就職給付金)と「再就職手当」の両方をもらうことはできません。

 

特別支給の老齢厚生年金をもらい始めてからの年金と給料の調整のしくみ

 

年金月額と給料月額によっては、年金の全部または一部がカットされる(「在職老齢年金」)

 

65歳までの特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金に入って働いている間は、「在職老齢年金」というしくみによって年金がカット(支給停止)されることがあります。

65歳までの年金月額と給料月額の合計が28万円を超えると、超えた分の半分だけ年金月額がかっとされる

65歳までの在職老齢年金の具体的なしくみは次の通りです。

・年金月額と給料月額の合計額が28万円を超えると、超えた分の半分だけ年金月額がカットされます。

つまり、年金カット額(月額)=(年金月額+給料月額-28万円)÷2

(「28万円」という数字は、毎年度1万円単位で改定される可能性があります。)

年金カットなしの事例

例えば、特別支給の老齢厚生年金額が120万円、給料月額が18万円なら、

年金カット額(月額)=(年金月額10万円(120万円÷12)+給料月額18万円-28万円)÷2=0万円

となります。

この場合、年金はまったくカットされず、全額もらうことができます。

年金一部カットの事例

例えば、特別支給の老齢厚生年金額が120万円、給料月額が26万円なら、

年金カット額(月額)=(年金月額10万円(120万円÷12)+給料月額26万円-28万円)÷2=4万円

つまり、特別支給の老齢厚生年金をもらえる年齢になって年金月額10万円をもらえる権利があっても、
厚生年金に入って働き給料月額26万円を受けていると、月額4万円だけ年金がカットされ、
残りの月額6万円だけ年金をもらえる、ということです。

年金全額カットの事例

特別支給の老齢厚生年金額が120万円、給料月額が38万円なら、

年金カット額(月額)=(年金月額10万円(120万円÷12)+給料月額38万円-28万円)÷2=10万円

つまり、特別支給の老齢厚生年金をもらえる年齢になって年金月額10万円をもらえる権利があっても、
厚生年金に入って働き給料月額38万円を受けていると、月額10万円年金がカットされ、
年金はまったくもらえません。

60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金が支給停止となっている人の人数・割合

厚生労働省によると、60歳台前半で年金をもらいながら厚生年金に入って働いている人154万人のうち、
在職老齢年金のしくみによって年金がカットされている人は88万人(57%)とのことです。

以上、年金月額10万円の事例で確認しましたが、年金月額は一人一人違います。

ご自分の年金月額・給料月額を用いて計算する必要があります。

年金カット額の計算は、会社が日本年金機構に届け出た給料データを基に自動的に行われますので、年金をもらう人が毎月計算や届出を行う必要はありません。

標準報酬月額と報酬月額

なお、給料月額は、正確には、「標準報酬月額」という数字を用いて計算します。
給料月額(報酬月額)と標準報酬月額との対応関係は、厚生年金・健康保険の保険料額表で確認できます。

例えば、給料月額が26万円ちょうどの人だけでなく、給料月額25万円以上27万円未満の人は、すべて標準報酬月額26万円となります。

(注)標準報酬月額の決定・改定のタイミングは次の通りです。

・60歳以上の人が退職後給料月額が一定額以上下がった状態で同一の事業所に一日の空白もなく継続再雇用された場合は、会社が同日付での退社・入社を届出ることによって、再雇用された月分から標準報酬月額が下がります。(60歳定年後の再雇用契約が更新される際に給料月額が一定額以上下がる場合も同様です。
なお、再雇用(または再雇用契約が更新)された月の翌月分以降の年金カット額計算は、新しい標準報酬月額およびその月以前の1年間の標準賞与額÷12を用いて行われます。)

・上記以外には、毎年4月・5月・6月に受けた給料月額(手当や残業代も含みます)の平均額に基づいて、その年の9月から翌年の8月までの標準報酬月額が決まるのが基本です。
・そのほか、基本給や手当など固定的賃金の変動があり、変動後の連続する3か月の給料月額から計算される標準報酬月額が、現在の標準報酬月額と比べて原則2等級以上変動した場合に限っては、4か月目から標準報酬月額が改定されます。

その月以前の1年間のボーナス(標準賞与額)の総額÷12も含めた「総報酬月額」を用いて計算

また、年金カット額を計算する「その月以前の1年間」にボーナス(賞与)を受けた場合は、標準報酬月額だけでなく、
「その月以前の1年間の標準賞与額の総額÷12」も給料月額に含めて、年金カット額を計算します。

ざっくり言うと、年金の月額換算額と会社からもらう年収の月額換算額とを用いて年金カット額を計算する、ということです。

正確に言うと、65歳前で厚生年金に入って働いている間の年金カット額計算式は、次の通りです。
・年金カット額(月額)=(年金月額+標準報酬月額+その月以前の1年間の標準賞与額の総額÷12-28万円)÷2

その月以前の1年間(の厚生年金に入っている間)にボーナスをもらったことがない人の場合は、「その月以前の1年間の標準賞与額」=0円として計算してください。

なお、年金カット額に影響するボーナスは、あくまでも 「その月以前の1年間」にもらったものだけです。

例えば、60歳になった月で定年を迎えてその後も厚生年金に入って働いていた人が定年直前にボーナスを受けていたとしても、
年金支給開始年齢が61歳以降の人の場合は、定年前に受けたボーナスは、特別支給の老齢厚生年金の年金カットにはまったく影響しません。

年金支給開始年齢が64歳の人の場合は、60歳定年前に受けたボーナスだけでなく、定年後厚生年金に入って働いた期間に受けたボーナスも、
63歳になった月の翌月以前に受けたものであれば、64歳になった翌月分からもらえる特別支給の老齢厚生年金の年金カットにはまったく影響しません。

この場合、63歳になった月の翌々月から64歳になった月の翌月までの間に受けたボーナスがある場合のみ、
「その月以前の1年間の標準賞与額の総額÷12」が毎月の年金カット額計算に影響することとなります。

ある月分の年金カット額計算に影響するボーナスは、その月からさかのぼって過去12か月以内に受けたものだけ、と覚えておきましょう。

(注1)会社からもらう年収の月額換算額、すなわち、「標準報酬月額+その月以前の1年間の標準賞与額の総額÷12」のことを年金用語で「総報酬月額相当額」といいます。

(注2)厚生年金基金にも加入の場合は、厚生年金基金が国に代わって特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の一部を代行して支給する部分(「基金代行額」)も含めた月額換算額を「年金月額」として計算します。

ねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所でも、標準報酬月額・標準賞与額は確認できます。

ご自分が働きながらいくら年金をもらえるかよくわからない場合は、年金事務所の年金相談で教えてもらうこともできます。

特別支給の老齢厚生年金と「高年齢雇用継続給付」の調整のしくみ


65
歳までの年金は、高年齢雇用継続給付をもらえる間は、在職老齢年金のしくみによってカットされるだけでなく、
高年齢雇用継続給付の額に応じてさらに年金がカットされます。
(厚生年金に入って働いている場合)

 

60歳到達時の賃金月額が40万円、定年後再雇用時の賃金月額が24万円の場合、
再雇用時の賃金月額は61%未満(60%)に低下しています。

ですから、雇用保険から高年齢雇用継続給付が36,000円(再雇用後の賃金月額×15%」支給されます。

もし、この人が、厚生年金に入って働いていると、どうなるでしょうか。
(特別支給の老齢厚生年金を120万円もらえるとします。)

・60歳以降老齢厚生年金をもらえるまでは、

月額27.6万円(給料月額24万円+高年齢雇用継続給付3.6万円)をもらえます。

・特別支給の老齢厚生年金をもらい始めてから65歳までは、次の通りです。

まず、厚生年金に入って働きながら、年金月額10万円および給料月額24万円をもらうわけですから、
「在職老齢年金」のしくみにより、年金月額が3万円カットされます。

年金カット額(月額)=(年金月額10万円+標準報酬月額24万円+その月以前の1年間の標準賞与額の総額0円÷12-28万円)÷2=3万円

そして、高年齢雇用継続給付が「再雇用後の賃金月額×15%」もらえることを考慮して、
さらに「標準報酬月額×6%」だけ、年金月額がカットされます。

この事例の場合は、14,400円(標準報酬月額24万円×6%)だけ、さらに年金月額がカットされます。

ですから、年金は月額55,600円だけしかもらえないこととなります。

・もらえる年金(月額)=年金月額10万円-在職老齢年金による年金カット額(月額)3万円-高年齢雇用継続給付がもらえることを考慮したさらなる年金カット額(月額)14,400円

高年齢雇用継続給付は雇用保険からもらえるお金です。

一方、特別支給の老齢厚生年金は厚生年金からもらえるお金です。

雇用保険から現在の給料月額(賃金月額)の15%のお金を高年齢雇用継続給付としてもらえるのであれば、給料月額(標準報酬月額)の6%だけ、年金月額をさらにカットします、という趣旨の調整なのですね。

つまり、高年齢雇用継続給付としてもらえるお金の4割相当分だけ、年金をさらにカットする、という制度です。

さきほどの事例で、会社からもらうお金と国からもらえるお金をすべて合計すると、月額33.16万円(給料月額24万円+高年齢雇用継続給付3.6万円+特別支給の老齢厚生年金5.56万円)をもらえることとなります。

高年齢雇用継続給付が支払われるための手続きは、原則として2か月に1回ハローワークから指定された月に行います。(手続きは通常会社が行います。)

(注)賃金月額=標準報酬月額となる事例で説明しました。雇用保険の賃金月額と厚生年金の標準報酬月額とは異なる額となることがあります。

(注)ボーナスを受けても、ボーナスは高年齢雇用継続給付の支給額計算には影響しません。したがって、高年齢雇用継続給付との調整による年金カット額にも影響しません。
その月以前の1年間に受けたボーナスが、年金との調整(在職老齢年金)の対象に含まれることと混同しないようにしましょう。

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